EMCを学ぶ

医用電気機器の電磁妨害に関する規格 IEC 60601-1-2 第4版

2014年2月発行の医用電気機器の電磁妨害に関する規格「IEC 60601-1-2 第4版」は、第3版(2007年版)から大きく変更され、 医用電気機器の製造業者への影響が大きい内容になりました。

>>最新の解説記事「IEC 60601-1-2:2014+A1:2020 (ed. 4.1) の概要」もご参照ください。

第3版からの特に大きな変更

リスクマネジメントの要求は、第3版にも含まれていましたが、本文中に具体的な要求はありませんでした。
第4版では、リスクマネジメントの必要性が強調され、規格のさまざまな箇所に具体的な要求が記載されています。

例えば、下記のような要求があります。

  • 合理的に予見可能な電磁妨害によってもたらされるリスクは、リスクマネジメントプロセスの中で考慮する
  • 試験時の構成は、リスク分析、経験、工学的分析、あるいは予備試験によって決定する
  • サブシステムでの試験が許容されるかどうかの決定は、リスクマネジメントプロセスを用いる
  • 製造業者は、個別規格またはリスクマネジメントに基づいて、詳細なイミュニティ合否判定基準を事前に決定する
  • 意図された使用環境が特別な特徴を持つ場合、イミュニティ試験レベルは、リスクマネジメントプロセスで考慮する
  • 無線通信機器の近接に関しては、隔離距離を縮めてより高いイミュニティ試験レベルを適用することや最新の通信サービスに対する追加の周波数での試験を実施することをリスクマネジメントの中で考慮する

当社の対応サービス

リスクマネジメントは、製造業者自身で行ない文書化する必要があります。
当社では、リスクマネジメントの実施を全面的にサポートさせていただきます。

標準的なイミュニティ試験要求の変更

環境が、専門的医療施設環境(敏感な機器や激しい妨害源の近くは含まない)、 在宅医療環境(救急車を含めた車両、航空機、船舶などを含む)、及び特殊な環境の 3つに再分類され、生命維持装置かどうかによる区別はなくなりました。

イミュニティ試験要求は、リスクマネジメントの中で検討の対象となるものの、 いくつかの試験は、試験レベルの引き上げ、範囲の拡大や追加が行なわれて います。

特に、無線通信機器の近接に対する評価が追加されているのが目につきます。
例(在宅医療環境)として、下記ご参照ください。

 IEC61000-4-2  静電気試験:接触放電 ±8kV、気中放電 ±15kVまで
 IEC61000-4-3  無線周波放射電磁界試験:80~2700MHz 10V/m
無線通信機器からの近接電磁界試験:380~5800MHz、~28V/m(パルス変調)
 IEC61000-4-4  ファスト・トランジェント・バースト試験:繰り返し周波数 100 kHzに変更
 IEC61000-4-5  サージ試験:信号ライン-接地間 2kV追加
 IEC61000-4-6  無線周波伝導妨害試験:ISM周波数帯 6V追加
 IEC61000-4-8  電源周波数磁界試験:30A/m
 IEC61000-4-11  電圧変動/瞬停試験:
  0.5サイクルの瞬停 瞬停位相角の増加(45°間隔)
  0%、1サイクルの瞬停 追加
  40%、5サイクルのディップ 削除
 ISO7637-2  直流電源上の過渡妨害:車載搭載機器 新規要求

当社の対応サービス

当社では、第4版で要求されている標準的なイミュニティ試験に対応しております。
また、リスクマネジメントに基づいて必要と判断された、より高い試験レベ ルでの評価や追加の評価につきましては、お気軽にご相談下さい

各国の導入時期(予定)

日本含め、各地域の導入予定時期については下記のとおりです。

 日本 

2018年3月1日、JIS T 0601-1-2:2018 が発行され、厚生労働省よりこの規格の取り扱いに関する通知「医療機器の電磁両立性に関する日本工業規格の改正の取扱いについて」(薬生機審発 0301 第1号)が出ました。※外部サイト(PDF)にリンクします。

概要

  • 適用可能規格
    -2023年2月28日まで:JIS T 0601-1-2:2012またはIS T 0601-1-2:2018 が適用可能
    -2023年3月1日以降:JIS T 0601-1-2:2018のみが適用可能
  • 2023年2月28日以前にJIS T 0601-1-2:2012への適合に基づいて承認や認証を取得した機器の製造販売を上記の期日以降も継続する場合: リスク分析を行い追加の試験や再試験が必要かどうかを判断可能。 リスク分析の結果、新たな試験は不要と判断した場合、その記録の保管などは必要だが再申請などの手続きも不要となる。
  • 国際的に用いられている適切な規格がある場合:従来と同様JIS T 0601-1-2 の代わりにその規格を適用できる場合がある(但し申請時にその規格を用いる妥当性を示す資料の提出が必要)。
 米国  既に適用可能
市販前届出のための第3版に基づく適合宣言は2018年12月31日まで受け入れられます
 欧州  既に適用可能
第3版に基づく適合宣言は2018年12月31日まで受け入れられます

この件に関しまして、ご質問などありましたら、お気軽にお問い合わせください

Posted:2016/11